出芽酵母の形態変化に着目した化合物スクリーニング法の開発(野上ほか)

 新しい薬が世に出るための第一段階として、放線菌や海綿、カビなどの生物が作り出す天然化合物や、化学合成で得られる化合物の中から、新たな効果を持つ化合物や、より強力な作用を持つ化合物、より副作用の少ない化合物を見つけ出すスクリーニングが行われています。当研究室では、出芽酵母の遺伝子機能の異常が細胞形態に反映されることを見いだしています(Ohya et al., 2005, Watanabe et al., 2009)。この発見を基に、出芽酵母の形態に影響を及ぼす化合物のスクリーニングを試みました。試験的にカビもしくは放線菌培養抽出液5000種類についてスクリーニングを行い、酵母細胞を細長くする効果のある新規骨格化合物を同定しました。現在はこの新規化合物がどのようにな機構で酵母細胞を細長くするかについて研究を進めています。

出芽酵母をツールとした化合物標的の推定法の開発(野上ほか)

 より効果の高い化合物を作り出すには、化合物が生体内でどのような分子と  相互作用し、生体機能をどのように制御しているのかを明らかにすることが  重要な課題です。当研究室では、出芽酵母の薬剤への感受性が遺伝子操作に  よって変化することに着目した標的推定と、薬剤による形態変化と遺伝子操  作による形態変化の比較による標的推定を行っています。

 本研究では、HU (hydroxyurea)をはじめとする複数の作用標的既知薬剤を テストケースとして、薬剤処理を行った野生型株と遺伝子欠損株の間におけ る形態の類似性から、体系的に作用標的を推定する手法を開発しました (Ohnuki et al., 2010, PLoS one)。本研究室で開発した細胞形態画像解析 プログラムCalMorphとそれを用いた出芽酵母非必須遺伝子破壊株4718株の形 態情報(Ohya et al., 2005, PNAS)を用いることで、高次元細胞形態情報の 特徴を定量的に比較することが可能となりました(図1, HUの例)。この新 しい解析手法は細胞形態に影響を与えるものであれば、いかなる生理活性物 質にも応用可能であり、薬剤作用機構の推定に汎用的な技術であると考えて います。

図1. 野生型酵母へのHU処理と標的推定結果

A. 30 mM HU処理した野生型酵母とHUの標的の一つであるRrn4pの遺伝子破壊株の写真
B. HU処理した野生型酵母の形態と4718株遺伝子破壊株の形態の類似性(相関係数)の分布
C. HU処理した野生型の形態プロファイルとrnr4変異株の形態プロファイルの二次元散布図
 散布図上の点は形態的特徴の主成分得点を表し、その分布(形態プロファイル)は相関係数0.8以上となったことから、二つの形態プロファイルは高い類似性を示した。

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